商売繁盛
10.19, 2013
中学校時代。
中学生になった僕はそこそこ勉強も運動もできて、真面目すぎず、ヤンキーでもなく、戦争と平和、愛とロックにも特に興味がなく
マンガとプラモとラジコン、そしてイチジクが大好きな普通の中学生だった。
学校では難解そうだからと芥川龍之介の文庫本を手に取り、赤川次郎をバカにした。でも本当は赤川次郎の方が面白かった。
星新一や筒井康隆を読んで「時間、止めてぇなぁ」と言ってみたり、スコラを見てる友達に「宇能鴻一郎はすげぇ」とか言ってた。
机にイニシャルだの、夜露死苦だのを彫刻刀で彫ってた。ホントどうかしてた。軽度の中2病。
このころは欲しいものが沢山あった。でも当時の田舎には中学生がバイトする場所などなく、親からもらえるおこづかいは少なかったので
多岐にわたる趣味、食べ盛りのおなか、マンガだとかプラモだとか宇能鴻一郎を買う金はない。
僕は友達と考えた。何とかしてお金を稼げないかと。
「イモ掘ろうぜ、イモ。自然薯。」と誰かが言った。
自然薯(じねんじょ)は山に自生してるヤマイモのちょっと高級なやつ。
山の中で注意深くみると特徴のある葉を付けたツルがありまして、それの根元にほぼ垂直にイモがついてる。
それを掘って八百屋に行って買い取ってもらう。んでプラモ買う、ウハウハ。これが僕らの考えた策。
自然薯を掘るにはかなりの体力とテクニックが必要だけど、体力は有り余ってたし、田舎の子はそういうの得意だ。
それからというもの季節の良い休みの日に早起きして、家にあった「芋掘り棒」なる道具を持参し、
山の中で自然薯を掘っては八百屋に行き、その足でプラモを買いに行くってのを続けた。
稼いだ金は家には持って帰らない。僕らは宵越しの金はもたねぇのだ。
八百屋のおじさんは泥だらけで自然薯を売りに来る中学生から結構いい値段で買い取ってくれて、
プラモ屋のおばさんは泥だらけでプラモを買う僕らを怪しい目で見てた。
その後商売の拡大を目指し、より利益率の高いヘボの巣の捕獲を始めたのですが、この話はまた次の機会に。
そんな日々を過ごしてる時に日曜洋画劇場で「トロン」って映画を観た。中途半端なSF感をもってた僕は
「これからはコンピューターの時代だ!イモ掘ってる場合じゃねえ!」と思い、
将来はコンピューター技師になろうと決意する。コンピューター技師って何をするかも知らないのに。
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