就職戦線
10.27, 2013
高校時代。 -続き- 前回はコチラ
クラスでの成績順位は基本的に非公表(上位のみ発表)だったので、僕は先生に聞いてみた。
「僕は、今、クラスで何番なのでしょうか?」
先生はハハッと笑いながら、「お前、ブービーだわ」と内緒で教えてくれた。
ブービー。狙ってもなかなか取れるもんじゃないなと思い、そして僕より下がいたので安心して僕もハハッて笑った。
笑ってる場合じゃない。もう既に5社くらい希望したが全て却下されてるのだ。
追い詰められた。希望は都会でSE(システムエンジニア)でそこそこ大きい会社で島耕作だ。
そんな会社はなかなかないし、あっても僕より成績が上のヤツが希望してる。
僕はしょうがないので毎日求人票がファイルされてる進路指導室に通いつめた。
名前のわりに何も指導してくれないその部屋に毎日通っていると、経理科の佐藤(仮名)も毎日やってくる。
彼もまた就職先が見つからない様子だった。
同じ境遇、類は友を呼ぶって事で僕らは一緒に求人票を探す事になった。
求人票は職種別に分厚いファイルにまとめられている。佐藤は経理職か営業職のファイルを探し、僕はSE職のファイルを探す。
「コギソ、ここはどうかね?」「そこはちょっとやめといたほうが良くね?」など互いの希望の相談をしながら職を探す日々。
ハイスクールでハローワーク。
ある日佐藤が言った。「オレ、ここにする!」と。
ついに来たか。仲間が一歩踏み出す喜びと寂しさ。それをかみしめながら、「どこよ?」と彼が差し出した求人票を見ると、
名古屋にある日立の子会社。コンピュータ販売会社で営業職だった。
条件はなかなか良かった。正直羨ましい。「良さげやね、いいじゃん!」涙目で言った。・・とうとう1人か。
そんな様子の僕に佐藤は気付かず、求人票のファイルから、「コギソ・・これってさ・・?」ともう一枚求人票を僕に渡してきた。
それは佐藤が選んだ求人票と全く同じ内容。でも1ヶ所違って職種欄に「SE」と書いてある求人票だった。
佐藤が発見した2枚の求人票は同じ会社の営業職とSE職の求人票。なぜか重なって2枚とも営業職のファイルに入ってたのだ。
恐らく学校側がファイリングする際のミス。1枚はSE職のファイルに入っていなければならない求人票だった。
「ジーザス・・・」普段は無神論者の僕もそうつぶやいた。恐らくこの求人票は今まで誰の目にも触れていないだろう。
ウハッ!これはイケる!「佐藤、俺もここにするわ!」夕暮れの進路指導室で僕と佐藤はガッチリと握手をした。
翌日、先生にその会社を希望すると、「こんな会社、まだ残ってたか?」と言われたものの僕の就職試験先があっさり決まった。
佐藤も決まった。
「あきらめたらそこで試合終了ですよ。」安西先生の言葉がグッと来た。
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