蛇のキモ
11.20, 2013
「マムシだ!」
オヤジが目の前の草むらを見て叫んだ。
僕と兄貴は驚きながらもその場を動けずにいた・・・・・・
よくオヤジに連れられて山に行きました。まだ小学生だった僕は2つ上の兄貴と一緒に山で遊んだり、竹の子を掘ったり、
ドジョウを捕ったり、山での遊びや、今でいうサバイバル術なんかをオヤジに教わってた。
オヤジは山の事なら何でも知ってて、僕ら兄弟はオヤジの事を山のヒーローと思ってた。
もちろん山のヒーローに連れてってもらえる山の事を僕は大好きだった。
オヤジは赤松林の斜面の下から見るだけで何処にマツタケが生えてるかを判った。教えられた場所からはマツタケが採れたし、
いろんな種類のキノコを収穫できた時は本当に嬉しかった。
ただ問題はそれが人様の山だった事だ。
今思えば泥棒ですよ。いや当時も泥棒です。時効です、ごめんなさい。
さらに、よくよく思えばカスミ網(違法です)を仕掛けたり、他にもかなりキワドイ事やってた。
何度かそれがばれそうになったときにオヤジは僕らをダシにしてその危機を乗り越えてた。
山の持ち主や山林保安官に見つかったとき、オヤジは「子供が山で遊びたいって言うから~遊ばせてるんや~」と言った。
僕らのリュックには収穫物がギッシリ詰まってるのにだ。
まさか子供連れで悪事を働いてるとは夢にも思わないのか、おじさんたちは微笑ましい顔をして立ち去った。
何度もいう本当にごめんなさい。
オヤジは僕らをカモフラージュに使ってる。そしてアレは人様の山だ。そう気付いたのはずいぶん後になってからの事だ。
その日もオヤジと兄貴と3人で山を歩いてると、オヤジが冒頭のように叫んだ。「マムシだ!」と。
マムシはご存知のとうり毒蛇だ。以前からマムシの危険性について教えられてた僕はビックリして動けなくなった。兄貴も同様だ。
オヤジもジッとしてマムシが通り過ぎるのを待つか、と思ったら違った。
オヤジは素早くマムシの背後に回りこみ、目にも留まらぬ早業で尻尾を掴み、
ブンブン振り回して頭を岩に叩きつけマムシを捕獲したのだ。
ビックリした。わが親ながらスゲェと思った。
オヤジは満足そうな笑みを浮かべ「マムシ捕れたでラッキーやわ!」と言いつつ、ナイフを出しその場でマムシをさばき始めた。
小学生の僕はその光景が怖くて堪らなかったが、オヤジがさばいたマムシの腹から青黒い内臓を取り出して指にのせ、
「ほれ、食え。」と差し出して来た時にはめまいがしてきた。なにこの野蛮なひと。
「いやや!ムリムリムリムリ!!そんなん食べれへん!」僕は思わずそう叫んだけど、ごく普通の反応だと思う。
オヤジは僕が食べないって言うので兄貴の前にソレを差し出した。兄貴はペロッと食べた。すぐ食べた。コイツ馬鹿だと思った。
よくそんなん食えるな。しかも美味しいとかいう。小学生が美味しいってのはカールとかサッポロポテトとかイチジクだ。
オヤジが兄貴に食わせたもの。ソレはマムシの肝臓。漢方の世界では高級食材らしいけど、生を小学生に食べさせるオヤジもどうか
と思うし、ペロッと食う兄貴もどうかしてる。僕はこの家族を反面教師にして育ったんだなと思う。
ちなみにマムシは翌日には焼酎漬けになってビンの中でとぐろ巻いてた。
そんなオヤジは最近パソコンを始め、「元気か~♪ 俺は元気です♪」ってふざけたメールをたまに送ってきます。
Leave a Comment