悪銭不身
12.3, 2013
会社員時代にパチンコに通ったことがある。
当時の僕の仕事はとても忙しく、朝9時から夜の11時ごろまでずっと仕事してた。
20代前半、遊びたい盛りだったけど、遊ぶ時間がなかった。
稀に会社を午後10時ごろに退社する事があって、何かで遊びたい、そんな気持ちでパチンコに行った。
帰りは1人だったし、飲みに行くのも寂しいし、社員寮に帰っても冷たい布団が待ってるだけだから。
会社近くのパチンコ屋の地下1階ホール。不人気の台が所狭しと置かれてる場所が僕のホームグラウンドだ。
僕が打つのはきまって「ミサイル7-7-6」って機種だ。
これはよくあるデジタルが回って777って揃うと玉が出るって機種ではなく、いわゆる「一発台」。
下の画像の真ん中にある3つの穴の手前に玉が入ると大当たりってやつ。とてもアナログな感じ。
ただこの穴のところまで赤い線のラインで玉がなかなか通らない。当時1000円で1個入るか入らないかってバクチ台でした。
玉が運よく穴のところまでたどり着いても、クルクルと穴の周りの白い部分を何周かしてポトリと穴に落ちる。手前だったら大当たり。
奥の2つの穴に入ってたらはずれ。その瞬間がドッキドキ。
その日も1人でパチンコ屋に行った。「ミサイル」の台の列に行くと、いつもはガラガラなのに何故か人がいっぱいだった。
かろうじて1台空いてたのでそこに座り、踊るパチンコ玉を眺め始めた。
気が付くと僕の両隣の人は中国人で、僕を挟んで会話を始めた。
と思ったらその隣、またその隣と皆中国人だった。ここは今リトルチャイナや。
さらに気付くと僕の後ろに列全部の台をジッと観察してる男が立ってた。ちょっとイヤな予感がした。
でもまぁ観光でパチンコに来たのかなとも思った。
しばらく打ってるとふいに隣の男が何かを叫びながら右手を挙げた。彼の台を見ると玉が通ってクルクルと回ってる!
おお!大当たりくるか?!!って僕もちょっと興奮してた。
そしたら後ろで見てた男がすごい勢いで来て、台のハンドルをもつやいなや、ぶっ壊れる勢いで思いっきり引っ張った。
「バァァーーーーーーン!!」
台のガラスが割れんばかりの音がした。台座の一部が一瞬ズレる程の衝撃。僕はビビッた。超ビビッた。
正直漏らしそうになった。はっと気付いて隣の台を見ると大当たりしてた。
台に力を加えて玉を強引に手前の穴に落とす。これはゴト行為といって犯罪だ。
アカン、これはアカン。やり方がアグレッシヴすぎるわ!びっくりするわ、んもー!て思ってたら、
違う誰かが声を上げ右手を挙げた。すぐさま男が駆け寄り「バァァーーーーン!」てやって大当たり。
後ろにいる男は台を引っ張る専門のようだ。このバン男、タイミングを完全にモノにしてる。ある意味すげぇ。
その日、「ミサイル」を打ってるのは僕を除いて全員が中国ゴト集団だった。流石は雑技団の国。チームワークで攻略だ。
その後もアッチで「バァァーーーーン!」コッチで「バァァーーーーン!」。その度に大当たりの音が鳴り響く。
これはね、触らぬ神に祟りなしですよ。僕は見て見ぬフリを決め込んだ。通報するのもおっかねぇ。
とりあえず今は目の前の銀玉に集中しよう。パチンコなんて1人でするものだしー、
周りが何であろうと関わらなければ僕にはカンケーないしー、他人だしー
っていろいろ考えながら周りの状況を無視する事にした。
しばらく後、ついに僕の台も玉がやっと通った!穴の周りでクルクルと回り始めた!来いよ!大当たり、来い!
って思ってたらそれを見た隣の男が何か言って、右手を挙げた。
それを見て、まさか・・・ねって思ってたら急に後ろからハンドルをバン男に奪い取られ、次の瞬間、
「バァァーーーーーーン!!」
再び僕はビビッた。超絶ビビッた。ちょっと漏らした。そして僕の台は大当たりを示すランプが点滅し始めた。
振り返るとハンドルを引いた男が親指を立ててニッコリ笑ってた。
僕は引きつった笑いを浮かべ、とりあえず親指立てといた。なんか怖いし。
いやいやいや、仲間と思われるわ!違う、仲間違うアルヨ!
大当たり終了後、あらぬ疑いをさけようと大あわてで帰ろうとすると、バン男は親しげな顔をして
また親指を立ててコチラに向けていた。
人生最大の「大きなお世話」。
しんさん!
これ、有名な中国のミサイル団やないっすか!?
貴重な体験羨ましいです!!
すーさん、そうなの?有名なの?ミサイル団ってw
貴重な体験かな、二度とゴメンな感じでした。
ちなみに次に行った時はミサイル撤去されてた。