デキル男
12.10, 2013
会社員時代の話。
当時僕はシステムエンジニアとプログラマーの中間のような仕事をしていた。
顧客の会社の販売管理システムや経理システムをそこの業務に合わせて構築するのが仕事だ。
ある時、東京の割と大きな会社のシステム構築を担当する事になったけど、規模が大きかった為、
親会社と共同でのシステム開発となった。僕と上司、そして親会社から3人のチーム。
東京組は顧客先で開発、僕らは名古屋で設計とプログラムを作成して定期的に上京する、そんな日々が続いた。
でもこの仕事、短い納期の上に度重なる仕様変更が災いして今でいうデスマーチの様相を呈してきた。仕事がオワラネェ。
その頃には僕は東京の顧客先で徹夜仕事を繰り返していたけどスケジュールとの差は開く一方だった。
いよいよ納期まで1ヶ月を切ったある日、東京組の1人が言った。
「・・・池山さん、呼ぶか。」と
池山さん(仮名)。以前から耳にしていた名前だ。開発がピンチに陥ると颯爽と現れて短期間のうちにシステム構築を成し遂げ、
颯爽と去っていく。そんな都市伝説みたいな人。それが池山さん。そんなひといねぇよと思ってたんで実在してる事に驚いた。
数日後、池山さんはやってきた。
歳は40代半ば、シュッした面長の顔。銀縁のメガネの奥の眼光は鋭く、いかにもキレモノといった感じの人。
徹夜続きでヨレヨレの僕たちと違って、ピシッとしたグレーのスーツを着て、ピカピカのゼロハリバートンの
アタッシュケースを持ってやって来た紳士。カッコイイと思った。やっぱデキル男は違うなと思った。島耕作みてぇだと思った。
ただ1つだけ、上着の胸ポケットにセーラームーンの人形が入っている事を除けば。
池山さんは噂どうり仕事がめちゃくちゃ出来て、早かった。午前中に話した仕様のプログラムは午後イチには完成して問題なく
動かすことができる。当時の開発環境では考えられないスピードだ。
打ち合わせをしても先手を読み、ユーモアを交えて進行する。仕事はどんどん進んだ。
だが誰もセーラームーンについて何か言う者はいない。
「これ出来ないとお仕置きされちゃうねぇ」って独り言を聞き、納期1週間前ぐらいに池山さんがライブに行くから早退する
って聞いても誰も何も言えなかった。ちなみにライブはセーラームーンのライブ?だそうだ。気になるわ。
こうして池山さんのおかげで納期ギリギリで仕事を終える事ができた。
顧客先に滞在3週間、池山さんはポケットに入れてるセーラームーンを誰からも、お客さんからもツッこまれず、颯爽と去っていた。
もちろん去り際もセーラームーンの人形は胸ポケットにいた。南君の恋人のように。
ものすごく突出して何かをこなせて、人を助けられる立場になれば、何をしてても誰も何も文句は言わないって事を実践してた。
そしていろんな意味でデキル男はやっぱ違う。それが池山さん。
しんさん!
僕の弟も名古屋でSEをしていたのですが、名前は憶えがないのですが、同じような話を聞いたことがあります。
弟のときは、やはりデキル人で、同じように助っ人できてきっちり仕事をして納期を守っていったと。
ほんで、弟が
「すごいっすね~」
っていったら、その人は
「ごめんなさい。こういうときどんな顔をすればいいかわからないの。」
って、言って去って行ったと。。
その時のその人の胸ポケットには”綾波レイ”フィギュアが入っていたと。
すーさん、弟さんが遭遇したその人が、日立系の会社の人でしたら恐らく同一人物ですよ。
デキル男はなんか違うもんです。
ただ後半の部分はウソでしょ?!!