夏来思出
8.4, 2014
夏が来ると思い出す。誰もがそんな思い出を1つや2つ持ってると思う。
僕がこの季節になると思い出すのは高校2年の夏休み。バイトに明け暮れた時の青苦く強烈な香りの思い出だ。
その年の夏休み、僕は同級生3人と地元にある耐熱ガラス製造工場でバイトをした。学校へは届け出ずモグリで雇ってもらった。
ガラス工場は清潔だけど成型するための大きなトンネル窯があり、窯が稼動してるとホントに暑かった。
仕事は単純作業が多く、窯から出てきたガラスを布で拭いたり、在庫の運搬や社員さんの雑用手伝いなど、工場内で呼ばれたら何でもやった。
それでも何も教えられてない僕らの出番も限界があり、時間を持て余したりした。
空いた時間には広い敷地内でフォークリフトを乗り回したり、尾崎ばりに不良品のガラスを壊して回った。要は遊んでた。
そんなバイトの休憩時間、同級生4人で色々と話してるうちに「誰の靴が一番クサイのか?」って話になった。
暑い職場の高校生男子。毎日同じ靴を履いてる。臭くないわけがない。
井沢(仮名)が言った。
「俺の靴、めっちゃクサイで。絶対一番クサイ!」
何故か誇らしげに、そして自信満々だ。僕も強臭には自信があったけど、井沢が靴を脱いで手にした瞬間、あたりに漂う異臭に閉口した。
えっこの距離でこれ?正直ビックリした。他の2人も眉をひそめ、井沢のK-swissを凝視してる。
協議の結果、とりあえず井沢は「靴がクサイチャンピオン」となり、検証の為、井沢を除く3人のうち1人が臭いを嗅いで、いかほどのものかを確認する事になった。そして僕はジャンケンに負けた。
僕はジャンケン負けた悔しさと、ここでひるんでは男が廃ると、井沢のk-swissを顔直前まで近づけ、思いっきり臭いを嗅いでみた・・・。
仮に「匂いで人は殺せるか?」と質問されたとしよう。あなたはどう答えますか?僕は即答します「殺せるよ」と。
あとね、理科の実験のとき試験管の匂いを嗅ぐ動作ってあるじゃないですか。手で仰ぐやつ。あれとても大事。
冗談抜きでめまいがして、脳を直接殴られたような刺激の後、意識がどっかへ連れ去られそうな感覚。頭の中で危険なアラームが鳴り、僕はたまらず膝から崩れ落ちた。
これには井沢本人も驚いたらしく、その後自分の靴の臭いを嗅いでいたが、本人は免疫?があるらしく、崩れ落ちる程の衝撃はないようだった。
僕はその日以降2~3日ずっと体調不良となった。
それからというもの僕らの前にちょっと臭うものが出現すると「井沢のk-swiss」より上か下かが臭いものの基準となった。
しかし高校卒業まで「井沢のk-swiss」を上回る臭さに出会うことはなかった。
そんなバイトの最終日、1ヶ月分のバイト代をもらう直前、社長から一方的に時給を下げると宣告され、文句を言うと「学校に連絡する」という汚い大人の手口を使われたので、僕らは倉庫の片隅に井沢のk-swissをこっそり置いてくるという臭いテロを行った。
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